日本介護支援専門員協会
会長 木村 隆次
新年あけましておめでとうございます。
平成22年を迎えるにあたり、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
介護支援専門員(ケアマネジャー)が誕生して10年がたちました。
昨年の介護報酬改定においては、利用者様から見てどういう介護支援専門員、どういう居宅介護支援事業所が求められているかという視点で評価がされました。具体的には利用者様が最も不安に思う入退院時に介護支援専門員が寄り添い医療機関と情報共有をする、いつでも介護支援専門員と連絡がとれる体制が整備されているといった「安心に応えられる」部分です。当協会は国民からの期待に応えるべく、介護支援専門員や介護支援専門員が所属する事業所、施設の環境整備に向け、それを支援する事業を推進しています。
さて、私達の自戒の意味も込めて、国民の皆様と一緒に再確認しておきたいことがあります。ここで言う「安心」とは利用者様の要望に全て応えるケアプランを作成することでしょうか。介護支援専門員とは何をする職種なのでしょうか。
例えば、「ひざが痛い」という利用者様を想定した場合、安静を促し、要望があればなんでもそのままサービスを組込むといった何でも「してあげる」ケアプランと、本人ができることを探してできる限り「自分でやってもらう」、さらにリハビリテーションなどを組込んだケアプランがあるとします。利用者様にとっては前者のケアプランが良いと思われがちな面もありますが、介護保険制度の法の目的から自立支援の趣旨を考えた場合、後者のケアプランが選択され評価されるべきだと思います。痛いからといってひざを動かさないままでいると、もっと状態が悪くなる場合もあるのです。動かすべきか安静か、それを判断するのは医師であり、リハビリテーションに関することなら理学療法士等の専門職です。介護支援専門員は、利用者様にしっかり向き合い要望を把握しつつ、こうした様々な専門職と連携をとって個々の課題を分析し、生活上の目標達成に向けて的確なケアプランを立てます。ヘルパーさんによる生活援助、理学療法士さんのリハビリ、管理栄養士さんの栄養改善サービス等、多職種によるサービスは介護支援専門員が作成するケアプランで動いていきます。そして目標達成状況の評価を行い、必要に応じて見直しのための課題をまた分析していくという循環型のケアマネジメントプロセスをしっかり進める指揮者の役割が介護支援専門員の仕事です。
要支援・要介護状態になったら悪化するだけ、全部助けてもらわないと暮らしていけないという発想をお持ちでしたら、それは誤りです。介護保険の目的、理念から考えるとどのような状態の人でも、自分でできることは自分でする。また、できることを増やす。そして夢や希望を実現するためのケアプランを作成するために介護支援専門員は、ケアマネジメントをしていきます。
今から10年後には我が国の全人口における高齢者の割合はさらに増加し、現在の保険給付(介護保険サービス)の水準を維持すれば、国民の負担(保険料と税金)が増大することは避けられません。自立支援に向けたケアプランを作成していく上で、介護保険サービスとして相応しいものは何か、地域の資源をどう活かすかということを、国民の皆様と一緒に考える時期に来ていると言えるでしょう。
介護支援専門員によるケアプラン作成は、「自助」「互助」「共助」「公助」※注サービスの順で組み立てていきます。このことは、ひとり暮らしの高齢者や認知症の人に対するより良い対応につながると考えます。また、一方でこのケアマネジメントは、介護保険の給付額の伸びを適正に抑制することもできるのです。
地域包括ケアマネジメントの中心となる専門職として、国民の皆様が安心して住み慣れた地域で暮らすことができるよう、一層貢献していきたいと思います。
本年も皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
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※注:出典「平成20年度地域包括ケア研究会報告書」
・自助:自ら働いて、又は自らの年金収入等により自らの生活を支え、自らの健康は自ら維持すること。
・互助:インフォーマルな相互互助。例えば、近隣の助け合いやボランティア等。
・共助:社会保険のような制度化された相互互助。
・公助:自助・互助・共助では対応できない困窮等の状況に対し、所得や生活水準・家庭状況等の受給要件を定めた上で必要な生活保障を行う社会福祉等。
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